◆いろいろなGAP(ギャップ)について

by 山田智也 2024年6月26日 ≪Column vol. 5≫

 世界的に人気の米国発の洋服ブランド「GAP」(ギャップ)は1969年に創業され、サンフランシスコに1号店がオープンしました。もともとは、自分に合うジーンズを簡単に見つけられるように、というシンプルなアイデアと、洋服を売る以上のことをする、というコンセプトで、当時は、リーバイスのジーンズや、レコードやカセットテープなどを売っていたようです。

のちに、オリジナルブランドで様々な新しいファッションアイテムを生み出し、当時は男性が主流のジーンズを女性が着やすいように専門店をはじめたり、LGBTQ(性的マイノリティ)の雇用やインクルーシブなデザインの先駆けと言われています。企業理念は、あらゆる背景を持つ有能な人材の募集を推進し、Opento all(すべての人を受け入れる)という考え方でハラスメントや差別のない職場の提供を目指し、環境問題や倫理的な行動規範にも、力をいれて世界の拠点で10ヵ国語以上に翻訳しグローバルに教育をしているようです。創業当初から、いろいろなGAP(ギャップ)を見つけて、それをビジネスのアイデアや商品に変えて発信するビジネスモデルには学ぶものが大いにあると思います。

英語のGap(ギャップ)の意味は「すきま」、「差」とも訳されて、ジェネレーションギャップ、ジェンダーギャップ、などでよく使われます。世界のさまざまな社会でも世代の差、それから性別の差がよく問題視され、共通の課題とされていますが、そもそも(当たり前の話ですが)人間だけでなく動植物の多くは、異性のもの同士から子や種子が生まれ、親世代から子の世代が誕生します。職場でも家庭でも、我々は世代や年代別でひとくくりにしがちですが、それはよく考えると、生きてきた時代のトレンドにギャップがあるだけで、価値観やものの考え方自体は実際には時差はあるものの、そう大差はないような気がします。

よく、親ほど年の離れた年の差婚、などと揶揄されて言われがちですが、世代が違えど精神年齢的な部分ではつながることができますし、趣味趣向が違えど、一緒にいて心地よい関係や、お互いの役割、ライフスタイルが合致することが多々あると思います。実際に、私の周りでも年の差婚で幸せそうな生活をしている親しい友人夫婦がいますが、一緒に食事すると、どっちが年上なのかわからなくなるほど、若い奥さんがしっかりしているなあ、と思う場面があります。そして今の時代、性別を超えてのパートナーシップもありますし、実年齢よりも、お互いが必要としている精神的なつながりが重視される世の中になりつつあり、理解が深まってきていることは事実です。

若いから、もう歳だから、、、などという言葉はよく聞きますが(みなさんの職場などではいかがですか?)ジェネレーションギャップという固定概念をすてて、固定化した思考を別の角度で考えてみると、いがいと面白いです。

「若いからできることもあれば、できないこともある。そして歳をとっているからできることもあれば、そうでないこともある。」

現実的には、このようなギャップがうまく噛み合って、ものごとが上手く運ぶケースも少なからずあると思います。

映画『マイ・インターン』(2015)はロバート・デ・ニーロとアン・ハサウェイが共演し、若い女性社長のもとで70歳のリタイアした男性がシニアインターンとして働くことになったコメディ映画です。ストーリーが展開するにつれて、ジェネレーションギャップを感じさせない友情が芽生え、立場と役割は違えどお互いに支え合う関係性が微笑ましい内容です。

このような話は実際日本にもたくさんあるでしょう(シニア世代の人たちが会社から居なくなっては大変!)

また、ミネベアミツミ会長の貝沼由久さんのコラム(日本経済新聞令和6年6月24日「先達への感謝」より引用)には「(前文省略)出席された先輩達の中には、約50年前のタイのアユタヤへの進出時、周辺にはホテルもないため民家に泊まり、川の水で体を洗って頑張った歴戦の勇士や(中略)諸先輩方が苦労して、努力して事業や組織を築いてくださったからだ。我々がゼロから立ち上げたのではない。(中略)先輩達の努力の上に今の自分があることを忘れてはならない。常に諸先輩方への感謝を忘れてはならないのだ。」という言葉があり、とても感銘を受けました。

確かに、「亀の甲より年の功」という言葉がありますが、年長者が長年積んできた経験値が活きる場面もあります。同時に、若者には、年長者にはできないスキルや知識、アイデアがあったりします。

このギャップを埋めるものは、お互いの距離感だったりコミュニケーションの仕方が大事になってくると思います。

一昔前は「黙って言う事を聞け」、「いいから、よく見ておけ」というような言葉や行動は先輩が後輩に対して、また親が子に向けてよく使っていた言葉だと思いますが、この「年功序列」をとっぱらって人間同士の議論をして、お互いに尊重しつつ謙虚になり、まっとうな意見の交換をして同じ方向を目指していく、という考え方は、これからの時代で、会社内だけではなく、家庭でも、広く社会にも必要なことになってくる気がします。