◆セーフテイ―とはなにか

by 山田智也 2024年5月31日 ≪Column vol. 4≫

「五月晴れ」という表現は最近あまり聞かなくなりましたが、今日(5月29日)の横浜の天気はひょっとしてそうかもしれません。台風一号の影響で昨夜は暴風雨でしたが、今日は嘘のように天気がいいです。真夏の晴天とはまた異なりますが梅雨の晴れ間のような気持ちがいい天気です。関東甲信越の今年の梅雨入り予測は6月7日頃とのことです。梅雨は、ハッキリとしない天気が続き、我々人間にとっては気分もあがらないですが、田んぼの稲の生育や動植物にとってはとても重要であるようです。

さて、話題はかわりまして「セーフテイー」についてです。2017年より国土交通省の住宅セーフティーネット制度というものがあります。高齢者、障害者、子育て世帯等の住宅確保のために、公営住宅以外でも民間の空家などを活用し、登録制度として情報提供するシステムも整備されております。また、厚生労働省では生活保護制度や介護が必要な方々に対しての福祉サービスがあり、必要な保護や介護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障し、自立を助長することを目的としております。こういった分野をセーフティーネットと呼ぶようです。

OECD(経済協力機構)のデータでは海外と日本の比較としては、GDPは平均程度となっているものの、就業率や教育水準は比較的高水準となっていますが、一方で、短所として相対的貧困率が平均より高い水準で所得格差が顕在化しているようです。また日本の犯罪率は低い反面、自殺率は極めて高く、生活満足度、政治制度や公的機関への信頼度などは平均値を下回っているようで、社会的な信頼感やつながりに問題がみえます。

不動産の賃貸管理の現場では、さまざまな入居者がいます。セーフティーネットを必要としている方々も相対的に増えているようにも思いますし、当社では新規の賃貸借契約では、オーナー(貸主)の家賃回収リスクを最小限にするために、家賃の保証(立替)をする賃料保証サービスを導入しておりますが、未だに未納者は実在し、また未納賃料の督促業務も必要なケースが多々あります。

ひと昔前は、収入や資産のある親族が、入居者の身元を引き受けるべく連帯保証人になり契約をすることが主流でしたが、2020年の民法改正で個人が連帯保証人になる場合の極度額の設定が必須となり、また保証人の支払い能力を担保するものもないことから、実務的には保証人に請求をしてもすぐに回収ができない場合もありました。

現実的には、契約時点では、支払い能力があった入居者や連帯保証人であっても、その後退職して年金暮らしになり、その他さまざまな事情で資金不足や、健康状態で就労不能となったり、高齢者で要介護となる、など、年齢だけでなくその時の状況次第で、家賃の支払い能力が無くなることは、実際に少なくありません。

そんな時に、家賃保証会社による代位弁済や、その後未納が続く入居者に対しての督促、契約解除業務の補佐、強制執行手続きなどまでを、すべて貸主に代わり対応してくれるので、家主や管理会社の立場からすると、とても安心なサービスではあります。昨今のニュースで、家賃保証会社の未納賃料に対しての督促行為でのトラブルが発生したり、また保証委託契約の内容で、消費者の利益を一方的に害する条項を禁じる消費者契約法に違反すると判断されたケースもありました。しかし、家賃を払わないで居座る家賃滞納者に対しての保護をして、家主の収入保証は、いったいどこで担保できるのでしょうか。消費者保護法は消費者から不当に搾取する行為を防ぐべきものであるべきで、未納者の言い訳を正当化するものであってはならないと思います。信頼関係が崩れたとみなし、本来は契約の即時解約と退去の請求が有効であるべきです。

家賃滞納者のほとんどが、その他にいろいろな返済を抱えて資金難である場合が多く、家賃の支払いが後回しになっているケースがあります。最近はクレジットカード以外にもアプリでの電子決済や分割・後払いなどのサービスが増加し、買物や飲食などで日常的に現金で支払うことの必要性が無くなってきており、その場でお金を消費している、という感覚が薄れている可能性が高いです。

家賃手帳を片手に現金で家賃を持参する入居者もいました。私自身も昔の借家は隣に住む大家さんに直接借りていたので、家賃を手渡して、玄関先でお茶を頂いて(ときには「あがっておいで」と食事までご馳走になり)孫と遊んだり、一緒に出かけたりして、ある意味で理想的な「大家と店子」だったのかもしれませんし、20年後の今も連絡を取り合っていますし、この御縁は一生ものです。

セーフティーとはいろいろな場面で使われることばですが、本来の意味は、安全・安心であることで片方を一方的に救済することだけではありません。セーフテイ―の先には信頼関係や、お互いにできることを助け合うリスペクトが大切になってくると思います。